ピカピカの新築から早20年。
何気なく外壁を見ると表面がひび割れているのを見つけたあなた。
慌てて業者に見てもらうも、長年放置されたひび割れは下地にまで及び、外壁を全て取り替えることになるのだった。
これは極端な話だが、実際に起こりうる話だ。
このような事になる前に、適切なタイミングで外壁塗装を実施することをおすすめしている。
ただ、それなりの知識が無ければ外壁塗装のタイミングを判断するのは難しい。
そこで、今回は外壁塗装の適切なタイミングや劣化した外壁材の特徴を解説した。
冒頭のようなケースを避けるために活用してほしい。
採用している外壁材によって塗装の頻度は異なるが、ここでは一般住宅の8割が採用していると言われる窯業系サイディングボードとして解説する。
結論から言うと、窯業系サイディングボードは最低でも15年に一度は外壁塗装を実施しよう。
もっとも、専門家の立場から言えば10年に一度は実施してほしい。
何故か。
もともと塗布されている塗装が10年ほどで剥がれてきてしまうからだ。
あまり知られていない事だが、窯業系サイディングボード自体に防水性能はほとんど無い。
最初から塗装されているのは何も見た目のためだけでなく、防水という重要な意味合いも含まれている。
なので、最初に塗布された塗装が剥がれる10年前後で再度塗装がするのが本来はベストだ。
とはいえ、外壁塗装は高額な費用がかかるリフォーム工事だ。
実際、何の抵抗もなく10年毎に塗装工事をできるのは限られた世帯だけだろう。
塗装の大切さをよく知っている筆者自身もそのような頻度ではとても出来ない。
だが、そのまま放置すれば外壁材の劣化は免れない。
なので、どんなに長く見積もっても最低でも15年に一度は外壁塗装をする必要がある。
もしも、15年以上経過して塗装が剥がれた外壁を放置すると、外壁材が雨風や紫外線に直接晒されてしまう。
最終的には冒頭のように外壁材がひび割れ、下地の腐食に繋がり、全て取り替えなければいけなくなるだろう。
もちろん外壁材の交換には塗装以上の費用が必要だ。
そうなる前に塗装をしてほしい。
外壁塗装をする際に季節は関係あるのだろうか。
正直、いつでも大丈夫だ。
外壁塗装に使用する塗料の多くは以下のような条件であれば問題なく、発色・固着するように設計されている。
ただ、雨で塗装が出来ない梅雨の時期や日没が早い冬場はなかなか足場が撤去できない場合もあり、不便を感じるかもしれない。
また季節に関係なく、塗装期間中は塗料の付着を防ぐ為、窓にも養生する。
そのため、換気のために窓を開けたり、洗濯物を外に干したりは出来ない点にはあらかじめ注意してほしい。
春は塗料が乾きやすいので外壁塗装を行うにはベストな季節だ。
ただ、春も後半になると梅雨に差し掛かり、雨が多くなる。
塗装工事は雨が降ると作業できないので5月頃の工事は避けるのがベターだろう。
運悪く雨が続くと作業足場がなかなか撤去できず、不便に感じる事もあるからだ。
春であれば、3月後半から4月にかけての工事がいいだろう。
夏も塗料が乾きやすいので春と並んで、塗装にはベストな季節だ。
ただ、6月頃は梅雨時期なので避けた方がいいだろう。
また、8月からは台風の発生が多くなる。
夏の中でも7月が天候も安定しているので予定が組みやすいはずだ。
9月は一年の中でも最も台風の発生数が多いことで知られている。
なので、秋であれば9月以降の作業がおすすめだ。
台風にさえ気をつければ、空気も乾燥して塗装がしやすい季節だ。
冬場は日没が早く、夏場に比べると作業日数が長くなる傾向にある。
塗装面積によっては2~3日長く作業する必要もあるだろう。
そのため、足場の撤去がなかなか出来ずに不便が生じる可能性もある。
しかし、作業や塗装の仕上がりには影響しないので安心してほしい。
意外かもしれないが、新年を前に外壁や屋根を綺麗にしたいというご家族や、来年度の入居者を迎える前に綺麗にしておきたいというマンションオーナーから冬場に塗装工事を依頼いただくことは珍しくない。
ただ、冬場に注意が必要なのは雪と気温だ。
雪が降れば、塗料が流される恐れがあり作業ができない。
また、気温が5℃以下になってしまうと塗料が上手く硬化せず、施工不良の原因となるのでもちろん作業が不可能になる。
これらはやはり作業期間が長くなる原因となり、足場撤去ができずに不便に感じるかもしれない。
なので、1月・2月の真冬は避けて12月の早い段階で工事するのが良いだろう。
外壁材は塗布された塗料の寿命が近づくと様々なSOSサインを出して、塗装の時期であることを知らせてくれる。
また、サインの中には緊急性の高いものもある。
以下で紹介する外壁からのSOSを発見したらぜひ相談してほしい。
危険度:★☆☆☆☆
外壁材表面の塗料が劣化してくると色あせが発生してくる。
この段階では緊急性は高くないので、無理して塗装する必要はない。
色あせは多くの場合、10年前後で発生してくる。
そろそろ時期が近づいているな、と気に留めておこう。
危険度:★★☆☆☆
色あせから更に塗料の劣化が進行すると、チョーキング(白亜化)と呼ばれる現象が発生する。
これは塗料が分解され始め、白い粉状になる現象だ。
チョーキングが起こった外壁は触ると白っぽい粉が手に付着する。
外壁材表面の塗料が無くなっている状態なので、防水性などは失われつつある。
チョーキングが発生したら外壁塗装の時期だ。
参考:日本ペイント「用語解説-白亜化(チョーキング)」
危険度:★★☆☆☆
劣化した外壁材を放置するとコケやカビが発生することがある。
劣化が原因の場合、これらは塗料の防水性・防汚性が失われている箇所から発生することが多い。
ただ、日当たりが悪いなどの環境が原因の場合もあるので、まずは専門家に相談しよう。
危険度:★★★☆☆
チョーキングした外壁を放置すると塗膜が剥離してしまう。
こうなると外壁材が直接外気に触れるので劣化の進行はさらに早くなる。
また、ここからは雨漏りのリスクもあるので早急に塗装を進めるべきだ。
危険度:★★★☆☆
塗膜の剥離が起こる頃には外壁材であるサイディングボードの継ぎ目部分に施したシーリングに割れが生じる。
割れた部分から水が侵入し、外壁材の劣化を進行させるので外壁塗装の際には一緒に打ち替えてもらおう。
また、ここで一つ注意してほしいのがDIYによる修繕だ。
シーリング割れは軽いものであればホームセンターなどで販売されている修繕キットで対応できる。
しかし1階部分ならまだしも、2階以上の高さを自身で修繕するのは極めて危険だ。
また、シーリングの増打ちは打ち替えに比べて寿命が短い。
DIYでの修繕は応急処置だと割り切って、外壁塗装と一緒に打ち替えをしてもらってほしい。
決して見逃してほしくないサインが外壁のクラック(ひび割れ)だ。
クラックには2種類ある。
一つ目がヘアークラック。
二つ目が構造クラックだ。
危険度:★★★★☆
まずヘアークラックについて解説しよう。
ヘアークラックとはクラックの幅が0.3mm以下の小さなひび割れのことだ。
これは塗装の劣化が原因のほか、施工不良や電車などの振動が起こることもある。
まだ塗膜の表面が割れているに過ぎないので、慌てる必要はない。
ただ、ひび割れが大きくなり後述する構造クラックに発展する前や、何本もヘアークラックが発生する前に塗装して修復してしまうのが望ましい。
また、この段階であれば割れが大きくなる前にシーリング割れと同様、応急処置として自身でも修復できる。
危険度:★★★★★
構造クラックとはクラック幅が0.3mm以上の比較的大きなひび割れだ。
地震などで外壁材や躯体自体に歪みが生じることが主な原因だ。
また、可能性は低いがヘアークラックが更に進行して構造クラックに発展することもある。
構造クラックにまでなるとひび割れから侵入した雨水が外壁材にまで到達する可能性が非常に高い。
防水性の無い外壁材が濡れることで外壁内部からのカビや雨漏りの原因になるので早急に補修・塗装が必要だ。
多くの場合、構造クラック周辺の外壁材をカットし、プライマーやシーリング材で補修するカットシーリング工法が使用される。
補修が終われば、通常の外壁塗装のように上塗りをして完成だ。
しかしこの場合、外壁下地の状態によっては冒頭のように外壁自体の取り替えが必要な場合もある。
そうなると塗装以上の費用が必要なので、構造クラックを発見したらすぐに対処しよう。
また、カットシーリング工法で補修した部分と元々の外壁の色味を完全に合わせることは難しく、全面的に塗装されることがほとんどだ。
外壁塗装と屋根塗装のタイミングを合わせれば費用を抑えることができる。
なぜなら、両方の塗装作業に使用する足場の設置を一回で済ませることができるからだ。
一度に必要な費用は外壁にプラスして屋根の分だけ高くなってしまうが、トータルで見ると安く抑えられる。
足場の費用も通常10万円以上するので、その節約効果は無視できないだろう。
今回は外壁塗装のタイミングについて解説した。
以下に要点をまとめておこう。
外壁塗装は高額な費用が発生するリフォームだ。
だからといって、劣化した外壁を放置してしまうと塗装代以上の費用が必要になる。
何度もお伝えするが最低でも15年に一度は塗装を実施してほしい。
また、外壁からのサインは見逃さないように。
実は冒頭の話はフィクションではない。
弊社のお客様の自宅で実際に起こった話だ。
ここまで読んでいただいたあなたには同じような思いをしてほしくないという一心から書かせてもらった次第である。
少しでも役に立てば幸いだ。